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 チベットを超えろ!


Home > 旅行記 > チベットを超えろ!第1章

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大通りに面した窓から人の話し声に荷駄の音がする。あとは唸り声・・・。そう俺の唸り声・・・・。

僕は今「チベット」の「ラサ」に居る。初めの2時間は大丈夫だった。で、調子こいて階段登りダッシュをやったあたりからだろうか?

現在はベットの半径1メールすら動けない・・・高山病である。まわる地球、そう地球ってやっぱり回ってたんだと実感する素敵な高山病、

水を片手に宿のおね―さんに言われた通り大人しく寝ているのだが一行に体調はよくならなかった。さらに油ギッシュでゲキ辛な中国料理は管理人氏の胃をピンポイントに撃破、ピナツボ火山の様に数十分に一回は大噴火を起していた。

「う!」

 慌ててトイレに駆け込む・・・いや駆け込みたいのだが体がが言う事を聞かず這いずる様にトイレに向かった。途中チベット人のスタッフに心配され声をかけられた。

「大丈夫?」

「ダメ・・・・」

「きっと明日には馴れるから」

「ああ、ブッタに祈るよ」

正直そんなにゆっくりはしていられなかった。

中国に入国して半月程経ちビザの残り滞在可能日数が少なかったのだ。ビザの延長の為に戻る気にもなれずどうにかしてチベットを越えてそのままネパールに入国したかった。しかも手段はランドクルーザーをチャ―ターして陸路でチベットを抜ける方法以外僕の頭にはなかった。ガンガン痛む頭にゴロゴロ痛む腹を押さえながら高山病が治るのを待った。


 翌日、大分体調も良くなって腹が空いた為食べ物を買いに行くとことにした。食べ物といっても本格的な中国料理に管理人氏の胃が耐えれるわけでもなく屋台でバナナでも買うことにした。

「オイ、兄ちゃんこのバナナなんぼ?」

10本ほどの束を指差し聞くと

「あー10元ねー」(1元=15円)

へー結構良心的だなあ。と買おうとしたその時、奥にいたおばちゃんが

「あ!そいつは日本人だゾ!!」

いくら中国語が分からんでもそれくらいは訳せるが、その瞬間バナナ売りのにーちゃん慌てて価格訂正


「80元ねえ!」


「・・・・・・・・・・・・」(涙)

「もう一回値段言って?」

「だから80元ねえ!」

「さっき10元って・・」

「うんや、80元ね!!さっきの間違い!」

高い!高すぎるぞ!メイドイン中国「バナナ」!!

いや、なんていっても中国2000年の歴史が作り出したバナナだきっと何かがある
腹痛とめまいで値段交渉をする気力もなく、とりあえず言い値で購入(涙)

高級バナナを食べながらとりあえずはホテルに戻り今後の事を考えた。本日からツアーの行程が組まれていた。基本的に外国人は中国側からチベット(西蔵)自治区への入区は団体ツアーに参加しないと入区出来ない事になっている。その為僕もチベットへの入区に「成都」(チェンドウ)からツアーに参加して飛行機にてラサに来たのだ。そのツアー自体は別に参加しなくても良いのだがこの後数日に分けて「ポタラ宮殿」や「ラサ寺」を周る予定になっている様だ。日数は厳しいが押さえる場所は行くべきでしょ?と二日間ほどはツアーに参加してラサ観光をする事にした。

 横付けにされていた。ツアーのバスに乗り込み管理人氏、しかしほかのツアー参加者の雰囲気がおかしい。実は管理人氏「成都」から「ラサ」に飛行機で来る日に集合時間を寝過ごしてしまい危うく飛行機に乗れなくなってしまう一歩手前の事をやらかしてしまったのだ。多大なご迷惑をおかけした各国の皆様申し訳ない。ちなみにその時バスの最前席から「アイムソリー!」と日本人特有のお辞儀をかましたのが受けたのかそれ以来やたらと他のツアー参加者の方に声をかけられた。ん〜よく考えたらあの高山病で死んでいる時に「一緒に飲みに行きません?」と誘ってきたヨーロッパ系の金髪ポニーテールのオネーチャンはこのおかしな日本人に興味を持ってくれたかもしれないではないか?まて!まさか!!俺は貴重なチャンスを逃したのか!?決してハンサムではない俺、むしろムサイ男ナンバー1だが美的感覚が違うかもしれん!うおーカムバーック!パツキンポニテー!
失礼・・脱線してしまった。お話しをもとに戻そう。

 その後待望の「ポタラ宮殿」にを観光する事に、なにか待望なのか?行った事がある人ならわかると思うが、ともかく仏像ばっかで説明されても英語も分からなければ中国語もチベット語も分からない管理人氏にはチンプンカンプンでしかたがなかった。けど、一つだけ実行したい事がある為にここに来たのだ。ポタラ宮殿の最上階に上がるとそれぞれツアーの皆様が展望を楽しんでいると管理人氏は中央に腰掛けあぐらを組んで手を合わせた。そして高校時代に習った「南無阿弥陀仏」を唱え始めた。管理人氏の高校は仏教高校だった。あのころ仏教の授業がある度に「いつかポタラ宮殿で念仏唱えてやる!」と思っていたが今こうして実現した訳である。
 一通り唱え終えへ目を開けるとガイドのチベット人が目を見開いて聞いてきた。
「お前は仏教徒か!?」
 生まれも育ちも日本は三河の国、生粋の仏教徒の家柄、答えるには問題無かった。
「おう、そうだぞ」
「そうか!そうか!」

ガイドは嬉しそうだった。その後それはもう親切丁寧に分からん英語とチベット語を駆使してポタラ宮殿にある何百はありそうな仏像の説明をしてくれた時には涙が出そうだった。もうカンベンしてって・・・(涙)

 ツアーも一段楽して肝心なネパールまで道のりをどうするか考えていた。ひとりでランドクルザーを貸しきって行くには少々金額的にきついものがある。他に似たようなルートを考えている旅行者も考えは同じの様でホテルの掲示板に「共にネパールまで行く旅行者募集中」の張り紙がいくつもされていた。ただ、どれも英語で書いてあるのを見るからに日本人ではなさそうだ。とても英語が話せるとは言えない管理人氏、出来る事ならば日本人の方が何かと安心なのはたしか・・。とりあえずビザの日数はまだある。もう少しラサに滞在をする事に決めた。

 ツアーを終えてホテルに戻ると今日チェックインしたばかりらしき日本人旅行者がいた。ボロボロの服装にボサボサに伸びた髪の毛、しかし妙に整っているヒゲ、歳は二十代後半といったところだろうか?一目で分かった。
「こいつは濃い、かなり濃い!」

 旅行者にも色々いた。海外旅行じたいは管理人氏は素人だが今までのバイク旅行の中で培った人生で限りなくソレに一筋に生きたが為にその本人には分かっているかどうだが疑問だが不思議なオーラを発している人が旅行者の中には存在する。今目の前にいる彼には間違いなくそのオーラがあった。

「旅行ながそうですね?」

 ありきたりの質問を彼に問いかけてみた。

「ん?そうかい?」

「ええ、もうオーラ出てますよ」

「はっはっはっはっは」

 意外と言っては失礼だがなんとも接しやすかった。第一印象とはえらい違いだった。大抵こういった人物は自分の世界観を持っている為それに一致しない人には冷たいのだが、彼にはそれが感じられなかった。結構話し好きな様でその後の会話で彼が元美大生であった事や今までアメリカ人旅行者とここから数日車を走らせた場所にある温泉に行っていた事など色々説明してくれた。

「へーそんなんですかあ」

「あ、そやそや いーもん見せてあげる」

 彼はボロボロのスケッチブックを見せてくれた。細かくかかれた旅行先で見た建造物や装飾品などの説明や彼の日記など綺麗にまとめてあった。

「凄いなあ、結構マメなんですねえ」

 彼は照れくさそうに頭をボリボリかいていた。その時管理人氏のスケッチブックをめくる手が止まった。今までが綺麗にまとまっていただけにかなり衝撃的だった。そこには「ピカソ」と「ゲゲゲのきたろう」を混ぜた地獄絵図のような絵が描かれていた。

「な、なんっすかコレ?」

「あーこの絵?いやーキマっていた時に描いたやつだよ」

「キマっていた・・・?」

「おうおう、マリファナでドカーーンとあっちの世界に行っていた時に描いたやつさ」

 初めて出会う麻薬常習者だった。管理人氏はもっと麻薬をやっている人はそれはもう廃人の様に目は空ろで手がフルフル震えて「薬くれー!」と吠えそうな人と思っていたがあまりにもごく普通な人で正直ひょうし抜けだった。その後彼はオランダがマリファナが合法である情報を得て、そこにある「マリファナ喫茶」で現在旅行者の間で噂になっている「十勝ゴールド」と言うマリファナを求めて旅行をしてという事。名前から察するに日本の北海道産と彼は熱く語り、さらにそのマリファナは「ムツゴ○ウ王国」で秘密裏に栽培され日本の有名人などに高額で取引されていると熱く語りはじめました。

「そ、そ、そうなんっすか?」

「ああ!間違いない!じゃなければ”これは愛情表現です”とか言ってトラに噛まれるヤツがいるか!」

「ヤツは間違いなく常習者だ!」




 前言撤回です。ええ、飼ってます。
 間違いなく飼ってます。






 頭の中に「ヤリ手の脚本家」






 決して悪い人ではないのですが友達でいたら素で引きます。その部分を除けば旅行馴れした気さくな人で終わったのですが人とは分からないものです。

「あれ?もしかして麻薬反対派?」

「え?僕ですか?ん〜〜〜〜分かりません」

「分からない??」

「ええ、分からないです。あ、けど基本的にタバコは嫌いなので吸いませんよ」

 きっと管理人氏の様に思っている人も何人もいると思う、曲がった事が嫌いな人が聞いたら怒ってしまいそうだが実際、何が正しくて何が間違っているのかと問いただされて答えられるのは法律でも人間の道徳心でもなくて所詮は神様しかいないんじゃないかなと管理人氏は思ったりする。

「あーそだそだ!チャイでも飲みにいかん?」

「チャイ?」

「おうおう、このホテルの目の前にいい店あるだろ」

 彼に案内されるがままにチャイを飲みに行く事になった。「高光商店」とボロボロになった看板が目印の店に入り管理人氏はびっくりした。周りの店は主に中国人が経営して客も中国人が多い中でこの店には中国人がいない全てチベット人だった。

「おう、おっちゃん元気にしとるか?」

 店の入り口を入った所に座っていた中国の公安の制服を着たヨボヨボのチベット人のじいちゃんに彼は挨拶を交わすと他の客と相席で椅子に座った。お世辞にも綺麗とは言えず狭い店内にチベット人が満席に座って雑談をしていた。

「あれ、どうやって注文するの??」

「あー注文か?そこにカップあるやろ?」

「あ、これかい?」

「そうそう、それを机の上におきな」

「ほうほう」

「そしたらお金を机の上に出しな」

「へ、全額?」

「いやいや、とりあえず5元ぐらい置いてごらん」

 言われるままに近くで逆さまに置いてあったカップと5元を机の上に置くと何処からともなくチベット人のお姉さんがやってきて5元をさっと取ると4元と小銭を置きカップ一杯にチャイがそそがれた。

「どうや?分かっただろ?」

「なるほどね」

 どうやらこれがこのチャイ屋のシステムらしい。飲み終わりカップを机の上に置いておけばお金が机の上に出されている限り次々にチャイをそそいでくれた。何気に周りを見ると不思議な気分にさせられる、店内は僕ら二人を除いて全てチベット人、明らかに僕らだけ浮いているだが周りの人々は僕らを気にすることなくチャイを飲み雑談を楽しみ暖かい店内でゆっくりな時間が過ぎている。そんなまどろんだ時間を過ごしていると隣に座っていたチベット人のお爺さんが声をかけてきた。

「日本人かい?」

「ええ、そうですよ」

 爺さんは「ニマ〜」と笑うとチャイをひとくち口に含みシワだらけの手を合わせて何かを僕らに聞いているようだった。チベット語なんて当然分かるはずもなく中国語も挨拶程度しかしらないのに爺さんの言いたい事が分かるはずもなかった。

「何が言いたいんだろう?」

「まって・・・・・」

 彼が何か分かる素振りを見せた。

「明日?明日がなに?」

「・・・・・ ダライ・ラマ ・・・・」

僕にも分かった小声で話す爺さんは現在インドに亡命中の「ダライ・ラマ」の事を何か言いたげだった。
その時彼が思い出したように答え始めた。

「分かった!」

「何?なに言ってんの?」

「この爺さん明日はダライ・ラマの誕生日だっていってんだよ」

「ふ〜ん でダライ・ラマって誰?」

 彼の目は点だった。その後、彼の説明によると「ダライ・ラマ」とはかつてチベットが中国領ではなかった時のチベット人の指導者でありチベット仏教の最高責任者みたいなものだと言う。何でその人物がインドに亡命しているかについての経緯については中国側とチベット側で言い分が違う事と国家間の問題をはさむ為一個人の考えの元で、この様な公共の場での発言は控えるべきだと管理人氏は思い、その辺りは大変無責任ではあるがこの旅行記を読む人それぞれが調べて頂いて各自の考えの元で判断を下してほしい。この場では「チベットが中国領ではなかった時のチベット人の指導者でありチベット仏教の最高責任者」と考えてもらえば分かりやすい。

「へ〜、結構複雑な歴史があるんだねえ」

「そうだね」

 現在では「ダライ・ラマ」の肖像画などを飾ったりする事や敬う事はご法度となっているらしくチベット人の爺さんは小声でその喜びを僕らに教えてくれた。

「そろそろ出るか?」

「そうだね」

「じゃあな爺さん!」

 爺さんはシワだらけの手を振って答えると「ニマ〜」と笑った。こっちも「ニマ〜」と笑い手を振ると「高光商店」を後にした。
 

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